和のあぶら

あぶら紀行 工房地あぶら編

岩手県で、農薬を使わない国産の菜種を原料にして油を搾っているところがあると聞き、直感で「行ってみたい!」と思っていた。
そんな時、あぶらの特集をするという、季刊誌「ふでばこ」さんの取材に同行させていただく機会に恵まれた。

初めて乗る東北新幹線。窓から見える景色がのどかで心洗われる気がした。4月末、ところどころに山桜の咲く風景が見られる。

工房地あぶらの前にある溜め池岩手県南部の一関市。「工房地あぶら」は、鳥の声、カエルの合唱、麦畑、そして菜の花畑に囲まれた山間部にある。工房地あぶらの前にある溜め池にはカモの親子がノンビリと泳いでいた。


 

国産無農薬のナタネ

国産無農薬のナタネ

原料のナタネは近辺の農家と北海道で無農薬栽培されたもの。それを釜に入れ、薪で焙煎する。身が引き締まって黒光りして見えるナタネを手にとってみた。手のひらではじけるような力強さと温かさが感じられた。


 

搾りたての菜種油

搾りたての菜種油

一般的な菜種油は圧搾のあと、化学溶剤でさらに油分を抽出し、さらに化学的な方法を使って脱酸、脱臭などの精製処理をしているが、ここでは長く使われ続けてきた圧搾機を譲り受け、安心・安全を念頭においた油作りを実践している。手間をかけてじわじわと搾り出される油は黄金色に輝いている。搾りかすは肥料としてまた自然に帰される。


 

搾りたての油

右は搾りたての油。しばらく落ち着くと左のように澄んでくる。

搾られた油はしばらく寝かせて澱を落としてから、上澄みを取って加熱し品質を安定させる。その後フィルターでろ過し、瓶詰めする。これらの行程はすべて丁寧な手作業で行なわれている。

菜種の油を使ったお菓子

油やきはこのあたりでとれる小麦粉と
菜種の油を使った昔から親しまれているお菓子

自然の恵みがいっぱい

ウド、タラの芽、行者にんにくなどを
搾りたての菜種油で。自然の恵みがいっぱい

このようにして作られた油は、心を込めたお料理の数々に変身する。
近くの山から取ってきたばかりの山菜、菜種油で炒めた菜の花の巻き寿司、そして昔からおやつとして親しまれているという油やき…。健康的で身体の芯からキレイになれそうな品々に、舌鼓を打つ。


 

099昔は京都市内でも、ちょっと郊外に足を伸ばせば、菜の花畑にモンシロチョウが戯れるのを目にすることができた。遠くの山を臨みながら力強く咲く岩手の菜の花に、懐かしさを感じずにいられなかった。

山中油店の看板

山中油店の看板のひとつ。
「神仏燈明売捌処(しんぶつとうみょううりさばきどころ)」と書かれている

工房地あぶら」のみなさん

工房地あぶら」のみなさん。
前列左から、石川さん、菊池さん(奥様)、後列左から、菊池さん(ご主人)、小野寺さん、伊藤さん。


国産菜たね油

国産なたね油 5合瓶 ¥2,052(税込)
180g瓶 ¥810(税込)

山中油店の歴史も菜種油で始まった。その頃の主な用途は灯りや神仏に捧げるお燈明、今は美味しくて安全な食用油が求められる。工房地あぶらの菜種油に、原点を見たような気がした。