和のあぶら

あぶら紀行 玉締めしぼり胡麻油編

<玉締めしぼり胡麻油のできるまで>
山中油店の人気商品のひとつ、玉締めしぼり胡麻油の特徴は、透明感のある琥珀(こはく)色、練り胡麻のようなやさしい香ばしさ、胡麻の甘みと旨みが素材の持ち味を存分に生かしてくれること… 。店頭で試食していただくと、「うわぁ、おいしい!」と声が上がる玉締めしぼり胡麻油の魅力は、数え上げたらきりがありません。なぜ、一般的な胡麻油とこんなに違うのでしょうか?一番の理由は、その製法「玉締めしぼり」にあります。では、玉締めしぼりの工程をご覧いただきましょう。

胡麻を釜で焙煎します胡麻を釜で焙煎します。煎り加減は、職人さんの腕の見せ所。季節やその日の温度・湿度、胡麻によっても微妙に変わってきます。そのため、自然光が入る工場で、色を見る、香りを嗅ぐなど、五感をフルに働かせて、ちょうどよいところで釜から出します。このような開口式の釜は、煙を逃がし、焦げ臭を閉じ込めないので、胡麻本来の旨みを引き出しながら煎ることができます。

008焙煎後の胡麻はローラーで細かくし、蒸気を通します。蒸気を通すときには、底に穴の開いた桶を使います。穴の上に細長い編み篭状のもので覆いをし、胡麻を入れ、底の穴から蒸気を吹き込みます。ほんの10~15秒くらいすると、桶の上部から胡麻の間を通って蒸気が上がってきます。そうしたら蒸気を止め、玉締め機に胡麻を仕込みます。010


 

玉締め機玉締め機の仕組みをご覧下さい。写真奥に見えるのが「玉締め機」です。鉄製の枠の内側上部に「玉石」と呼ばれる丸い玉が固定されています。昔は花崗岩等の玉石でしたが、ほとんどが割れてしまったため、今は鉄製の玉石を使っています。(13台あるうち、1台だけ、石製の玉石を使った玉締め機が残っています。)前の桶のようなものは、外側は鉄製の「わっか」を三段重ねにし、その中に鉄の板を並べただけのものです。

玉締め機にセット鉄製のわっかの底にはマットを敷き、帯状に編んだ繊維を内側にめぐらせます。その中に蒸気を通した胡麻を入れ、上部は繊維で包み込むように押し込んで玉締め機にセットします。


 

032下から上へ、油圧で下の台をゆっくりゆっくり押し上げます。しばらくすると、鉄製のわっかの間から、じわりじわりと油が出てきます。この方法だと圧力がとても低いため、摩擦熱がほとんどなく、ビタミンEがたっぷり残ります。出てきた油はほんのり生温かく、煎りたての胡麻を擂(す)った時のような味わいが口いっぱいに広がります。016


 

和紙で濾します一番搾りの油をフィルターに通した後、
時間をかけて和紙で濾します。この和紙も手作りです。口に入るものだからできるだけ自然なものだけをとの思いから、軟らかく炊いたご飯を練って糊状にしたものを接着剤として使っています。


 

胡麻油一般的な胡麻油は、原料の胡麻を入れるところから濾過(ろか)して瓶詰めできる状態にするまで、連続式の機械を使って製造しています。それに対して玉締めしぼり胡麻油は、手間と時間をかけることを惜しまず、見ていて「胡麻にストレスがかかっていない」と感じる製法です。このようして他には見られない琥珀色に澄んだ美しい色調と、やわらかな味わいの胡麻油が生まれます。