これは魔法? 鮮烈なオリーブオイルの苦味マジック!                               EXVオリーブオイル mimi Ogliarola

エッセイスト 湧月りろ


mimi ogliarola(ミミ オリアローラ)

何これ、魔法? こんな不思議なオリーブオイルに出会ったのは初めて。
これが「mimi ogliarola(ミミ オリアローラ)」を味わった私の心の声だった。
オイルだけをテイスティングすると、その個性的な味わいに感じ入る。
まず舌にまろやかさを与えた後に鮮烈な青い香りが鼻に抜ける。
そして存在感のある苦味を覚え、喉を通る時には少しピリッとした刺激が残る。
くっきりと特徴がわかるオリーブオイルだ。
さすが、世界から脚光を浴びるイタリアのOlio mimiのフラントイオ(搾油所)、オイルを味見するだけで強い印象を残すテイストだ。

しかし、驚きはここからだった。
この特徴的な苦味。
これがまるで“魔法”なのである。

合わせる食材が持つ味わいによって、苦味が変幻自在に姿を変え、まったく違う味覚になるなんて。

苦味が食材を引き立てるだけでなく、なんと、ものによっては苦味が消えて他の味が出現することまであるのだ。
これはおもしろい!

そもそも、山中油店さんでおかみの浅原貴美子さんから
「これもじつは、春におすすめなんですよ。このオイルの苦味と山菜のほろ苦さが意外と合うんです。魚の内臓の苦さとか、苦味やえぐみのあるものと合わすと美味しさが増すんです」とお聞きした時から、いったい何が起きるのか試してみたくてたまらなくなっていた。
いよいよ春を告げる山菜が旬を迎えるシーズン。
今こそチャンスだ。

とりあえず帰り道で焼き立てパン屋さんに立ち寄り、バゲットを買った。
というのも、山中油店さんでテイスティングをさせてくださった羽渕さんが、しっかり焼き目をつけたバゲットの苦さと小麦の香りにも合うんですよ、とおっしゃっていたのである。
まずはこれを試そう。
冷蔵庫にはちょうど先日の「山中油店マルシェ※」で買った“春を告げる野菜”とも言われる「祝蕾(しゅくらい)」と、日本酒のアテに買っておいたシシャモもある。
苦味の代表格ゴーヤのチップもたまたまあったので、さっそく実験に取りかかった。

まず、苦さを出すために焦げる寸前まで焼いたバゲットにオリアローラをたらしてみる。
え?
さっき、はっきり感じた苦味がいつまで待っても脳へやって来ない。
代わりに想定外の、お菓子を食べた時に感じる“ご褒美”のような甘やかな誘惑が来た。
甘いわけではないのだけれど、甘やかなのだ。

あまりにも不思議なので慌てて2口、3口とバゲットを口へ運ぶ。
まるで化学変化が起きたかのように、なんだか違う味がする。
自分が何をこんなにも「美味しい」と感じているのか、しばらく考えてしまった。

少し苦味のあるバゲットの香ばしさと、オリアローラが持つ苦味が重なると、ぶつかり合うのか包み合うのか、厚みのあるコク深さに変化して旨味になるように思える。
そこに青いオリーブの実を思わせる爽やかな香りと、バゲットの小麦の香りがまた重なり合う。
辛味は消えて、ちょっとした薬味みたいにアクセントをくれる。
なんだか高級で複雑な、甘くないデザートを食べているような気がする。
例えるならほろ苦いカラメルソースがプリンの魅力を一気に高めるみたいな、そんな役割を果たしているのかもしれない。

すっかり楽しくなって、次にシシャモにオイルをたらしてみた。
これはすごい。かなり苦い内臓の味が柔らかく丸くなった。
日本酒にも、ワインにも合いそうだ。
ゴーヤはどうだろう。
うん、苦味は残るが、角が取れた。
生のままスライスした祝蕾は、野菜の青さとオリアローラの青い香りが呼応し合ってドレッシングをかけたサラダのような感覚。

熱を加えたらどう変化するのだろう。
祝蕾とベーコンをオリアローラでサッと炒めてみた。

 

塩コショウしか入れていないのに、料理として成り立っている。熱でマイルドになったけれど、爽やかさは抜けない。

いくらでも食べてしまいそうな軽やかさ。

 

いやぁこのオイル、本当におもしろいわ!
食材の本来の旨味をグイグイと引き出してくれたり、深みを与えてくれたり、合わせる相手によっていろんな効果を発揮する。

もっといろんな個性を持つ食材と合わせてみたい。
さっそく、おかみさんおすすめの山菜を買いに行こう。
きっと私を未知の世界へ連れて行ってくれる。
ミミ オリアローラ
すごいオリーブオイルに出会った。

→次回、オリアローラを使った春のお料理にトライ!

※山中油店マルシェは、油店で毎月第三土曜日に開催されているおいしいものいっぱいのマルシェです。毎回、無農薬野菜などをゲットして楽しんでいます!
ちなみに祝蕾はつぼみ菜とも呼ばれる春の野菜で、高菜の一種の新芽です。

 

 

 

 

 

2025年2025年3月22日

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