柔らかな京筍を芳香落花生油がやさしく包む。筍と油の相性を楽しもう 【リニューアル】芳香落花生油
エッセイスト 湧月りろ
桜の開花宣言がニュースで流れる頃、そろそろ恋しくなるのが筍。
食料品売り場で九州産の筍をチラホラ見かけるようになり、お花見シーズン真っ盛りには地元、京都産の筍も小ぶりなものが出回り始める。
桜吹雪が舞い散り、入れ替わるように八重桜のつぼみがほころぶ4月の二週目ぐらいには、京都の筍もいよいよピーク。立派なサイズの朝堀り筍が直売所のかごに盛られる時期となる。
以前、一度だけ、京筍の名産地で筍堀りを体験させてもらったことがある。
観光での体験ではなく、最高級品を出荷するために収穫される筍農家さんを取材させていただいたのだ。
山を少し入ったところにある竹林の姿は、想像とはまるでかけ離れていた。
うっそうと竹が茂る景色を思い浮かべていた私は、その整然とした清らかな空間に思わず感嘆の声をあげた。
1本ずつ間隔をあけてまっすぐ空へ伸びる竹。
天上で風にそよぐ笹の葉の涼やかな音色。
夜明けの青味がかった陽光が、笹の葉の合い間から赤土にこぼれ落ちキラキラと揺れる。
その空間に一歩を踏み入れると、まるで豪邸に敷かれた高級なじゅうたんのように、ふわりと足が沈んだ。
京筍は、一年中ずっと土作りに手をかけ、愛情たっぷりに育てられると聞いていたが、そんな努力の賜物がこの竹林の姿なのだ。
人の手でていねいに整えられたその空間はあまりにも清らかで、何もかもが柔らかく無垢であった。
みじんも姿を見せていない筍の在りかを、農家さんは巧みに探り当てて潔く掘り出す。
その場で皮をむいて、ポケットから取り出したペティナイフでサクリと一切れカットして差し出してくださったあの淡いアイボリーの色を私は今も忘れない。
まだ小さくて若い筍の初々しさ、みずみずしさ。
フレッシュな香りと心地よい歯ごたえ、甘みを含んだつつましやかな味わい。
こんな贅沢があろうか。
京筍がこんなにも柔らかく、優しい味に育つ秘密を垣間見たひとときだった。
今年は京筍の本場へ足を運ぶ機会があったので、3月の終わりに出始めの新鮮な筍を手に入れた。
牛の角ぐらいの小さなもので、皮をむくとミニクロワッサンみたいな可愛らしさだったけれども、7本も盛られてなんと1000円。1本おまけまで付けてもらったので8本もある。
40分も茹でれば十分にやわらかくなり、かじるとシャクッと歯切れのいい音が鳴って心が踊り出す。
春の醍醐味ここにあり、である。
さっそく、筍ご飯を炊いて、お豆腐入りの若竹煮を作った。
翌日にはオシャレなスピード料理「筍のバジルペースト和え」を。
茹でた筍をさいの目切りにし、エキストラヴァージンオリーブオイルを使った香り高いバジルペーストで和えるだけでできる、おすすめのイタリアン創作料理だ。
さらにお醤油を加えると白ご飯がすすむおかずにもなる。
メイン料理には玉締めしぼり胡麻油で炒めた青椒肉絲(チンジャオロースー)で筍の食感と胡麻の隠し味を楽しんだ。
最近はピーマンの種を取り除かず、一緒に炒めている。口の中でプチンと弾けるつぶつぶ感で遊んでいる私だ。
種だからきっと栄養分もあるはず。
日本酒のお供に、芳香落花生油でまろやかに仕上げた照り焼きも作ってみた。
美味しい油と筍はじつに相性が良い。
落花生の味わいが“じゅわ~”と広がるこの油は、加熱しても豊かな風味がちゃんと残る。
この優しい風味が料理の仕上がりを底上げしてくれるのだ。
縁の下の力持ち的な、なんともありがたい存在。
月に一度の山中油店マルシェで購入した「京都 山から工房」さんの実山椒の塩麹漬けを軽くつぶして加えると、いっそう日本酒に似合う味になった。
あまりにも簡単にできる一品なので、作り方を記しておこう。
筍のピークはまだ始まったばかり。
京都の産地でも、もう立派な大きさの筍が掘られている頃だ。
この春は、油と筍の相性をあれこれ探ってみるのはいかがだろうか。
〈レシピ〉

◆芳香落花生油を使った筍の照り焼き
【材料】2人分
筍(茹でたもの、水煮):小さなサイズなら2本分ほど
芳香落花生油:大さじ1
醤油:大さじ1強
みりん:大さじ1
実山椒または木の芽:お好みで。七味でも美味しい。
- 筍はくし切りにする
- フライパンに芳香落花生油を敷き、筍を入れ、少し焦げ目がつくぐらいに焼く。
- みりんを入れてから、醤油を入れ、筍に絡めながら少しだけ煮詰めるように焼き付ける。好みで荒くつぶした実山椒や、みじん切りの木の芽を和えて出来上がり。


2026年4月9日