体にいい油で心身を満たす。潤いのある一年を目指したい
エッセイスト 湧月りろ
2026年の幕が上がった。
新年、おかみの浅原貴美子さんが書かれた前回のブログ、離宮八幡宮様へのご参拝と初日の出の様子を清々しい気持ちで拝読しながら、私が幼少の頃はどんなタイミングで「あけましておめでとうございます」と挨拶していたのか、記憶をたぐり寄せてみた。
長男の嫁の重責を担っていた母は、大晦日は一瞬たりとも腰をおろす暇がないほど忙しくしていたものだが、年越しそばを作り終える23時頃にやっと一息つき、除夜の鐘に合わせて皆で日本酒にて乾杯するのが恒例だった。
その時の「あけましておめでとうございます」は、年越しの喜びに少しはしゃいで口にする挨拶。
本当の新年の挨拶はやはり、元旦の朝餉の前に家族が顔を揃えた時だったように思う。
元旦の朝はいつもより少し早い。
朝食前の準備に時間がかかるからだ。
私がいつも担っていたのは、星付きさん係。
“星付きさん”というのは丸餅の上に小指の先ほどのお餅をくっつけた、ミニミニ鏡餅みたいなもの。
つい最近まで、てっきり全国的な慣習だと思っていたのだが、じつは京都の、しかも限られた地域だけのものらしいと聞いた。
お餅つきの際、まずはお鏡さん(鏡餅のことを京都ではこう呼ぶ)と星付きさんを作ってから、自分たちの食べる分を丸める。
元旦の朝に、小型の三宝に半紙を敷いて星付きさんを置き、台所や洗面所などの水回りにひとつずつお供えしていく。
本来はお鏡さんのように、年末にお供えしておくものかも知れないが、我が家は星付きさんだけは必ず元旦の朝一番と決まっていた。
手作りならではの微妙に形の違う星付きさんをいくつも並べて、どこにどれを置こうかと考えながら順番に供えていくのが、幼い私の年始めだった。
父が神棚へお神酒や白みそ雑煮をお供えして、脚立を片付けてからおもむろに柏手を打つと、いよいよ新たな年が来たという心持ちになる。
部屋の空気がキリッと引き締まる中、家族みなで静かに声を合わせる「あけましておめでとうございます」こそが、本当の新年の挨拶だったように思う。
さて、今も私が元旦に必ず行っていることがある。
きっと多くの方々もそうではないかと思うが、今年の目標を決定することだ。
師走も半ばを過ぎた頃から、来年はいかにしようかと考え始める。
ああだこうだと悩みながらいくつか挙げていくのだが、今年はすぐに決まった目標がひとつあった。
「体に取り入れる油分を“いい油”に切り替える」
これを日々の心がけとしよう。そう決めた。
ありがたいことにこの一年、ここでエッセイを書かせていただき、油のことをいろいろと学ばせてもらった。
そして実感したのは、油というものの魅力があまりにも奥深いこと。
そして、まだまだ知らないことばかりだということ。
油について知っていく中で、知らないうちに摂取している油の存在に意識が向くようになった。
さまざまな食品の中に含まれている油は、いったいどのようなものなのか。
それを常に考えながら暮らすようになったのだ。
油というものは、おそらく考えている以上に大切で、体にとって重要な役割を担っている。
そもそも体のすべての細胞の膜は脂質であり、脳の大部分も脂質。
ホルモンの材料となり、ビタミンの吸収を助け、体温を保ち、皮膚を潤す。
健康を保つために必要不可欠な油を、なんだか正体のわからない油で摂取するのではなく、本当に体にいい油で満たしたい。
植物の恵みを丁寧に搾って作られた、優しい油で自分の体を維持していきたい。
心底そう思うようになった。
スーパーなどでさまざまな油が売られている中で、どれが本当にいい油なのか。
残念ながら、消費者がそれを的確に判断するのは難しい。
だからこそ、専門家が選び抜いた本物の油を取り揃える“油の専門店”が、私たちの味方になってくれる。
本当にいい油は、味わいも最上級。油がこんなにも美味しいと実感できる。
そのありがたさをしみじみと感じた一年だった。
年末、この目標のために山中油店さんへお邪魔して、リニューアルされた落花生油を購入した。
落花生の芳しさがバージョンアップして、さらに魅力が倍増したのだ。
ほんの数滴を口に含んだだけで、ピーナッツバターを研ぎ澄ましたような透明感のあるナッツの香りが鼻腔にまで広がる。
長く余韻を引くやわらかな味わい。
これを、山中油店のお向かいにある「中国料理よかっと」さんの名物「よかっと醤」と合わせて、湯豆腐にトッピングするのが美味しいとおかみさんにお聞きした。
この話しはまた次回、詳しくご紹介しよう。
珠玉の一滴で身も心も潤い、豊かな一年になりますように。
そんな願いを込めて、新年の澄んだ青空にそっと手を合わせた。
2026年1月7日

我が家のお雑煮は真っ白なお雑煮。真っ白な気持ちで新年を始めたいという願いを込めて。

今年の初詣は護王神社さんへ。毎年、巨大な絵馬がかかげられている。足腰の神様に手を合わせて。