豚肉&白菜の最強タッグを、おだしドレッシングが包み込む                                        【冬のパンフレット掲載レシピ】      おだしドレッシング

エッセイスト 湧月りろ

皆さんは“常夜鍋”と聞いて、どんな食材を思い出すだろう。
そんな名前は知らないという方もあるだろうか。
常夜鍋とは「毎晩食べても飽きない鍋」という意味を込めて名づけられたと言われ、一般的に具はほうれん草と薄切りの豚肉のみ。
だしも水だけ、もしくは水に日本酒と昆布を入れるだけで、具をさっとだしで茹で、ぽん酢をつけて食べる。
鍋の中でも最高レベルのシンプルさだ。

ほうれん草の代わりに、小松菜や白菜を入れる家庭もあったと聞く。
我が家はほうれん草派で、あく抜きのため下茹でしたほうれん草を昆布だしで温め、豚肉をしゃぶしゃぶのようにサッと茹でて、それらをお箸でつまんで酢醤油につけて食べる。
酒好きの父はこれが大好物で、冬になると熱燗をチビチビとやりながら長時間の晩酌タイムを楽しんでいたものだ。

ところが幼少の私にとっては、このメニューはちょっとシンプル過ぎた。
特に酢醤油で食べるというのが子どもには少し抵抗があった。
味がきつくなるのだ。
お酒には合うかも知れないが、子どもにはこの魅力がなかなかわからなかった。
なにかもうちょっといいタレはないものかと、いつもそう思っていた記憶がある。

豚肉と相性がバツグンに良い野菜と言えば、なんといっても白菜が一番に思いつくのではないか。
この両者ほどのベストマッチ具合、なかなかない。

豚肉と白菜の重ね蒸しに、山中油店の「おだしドレッシング」をかけると最高に美味しいとお聞きして、さっそくやってみた。

 

 

 

 

 

土鍋に白菜と薄切りの豚肉をミルフィーユ状に重ねて詰め込み、ほんの少し誘い水を入れてフタをし、しばし火を入れる。
白菜がしんなりしたら、おだしドレッシングをかけていただく。
これはいい。
文句なしの美味しさだ。

豚肉の旨味が白菜にしたたり、白菜の分厚い芯の内部へとしみ込んでいく。
何の味付けもしていない食材たちが、おだしドレッシングの程よいおだしの風味に包み込まれる。
まったく角のない、まぁるくて優しいこのドレッシングの味わいが、二種の食材をふんわりと繋いでくれるのだ。
手間いらずで、白ご飯にも熱燗にも似合う、まろやかな一品料理に仕上がった。

「重ねるのが手間なら、白菜と豚肉だけのお鍋にして、おだしドレッシングをタレにするといいですよ」とおかみさんに聞いたとき、常夜鍋の記憶がふいに蘇った。
今になって、妙にあのシンプルなお鍋に心惹かれる。
あの時にもし、酢醤油ではなく、このおだしドレッシングをつけて食べていれば、子どもの私でももっと美味しく食べられただろうに。
数十年前の幼い私に、この優しいおだしドレッシングを持っていってやりたくなった。

どのような作り方でも間違いなく美味しく作れるが、ここではより簡単に、シンプルに作る重ね蒸しレシピを紹介したい。
おだしドレッシングがあれば、先に味付けする必要もない。
時間をかけてていねいに取ったおだしの風味が、ただかけるだけで仕上がってしまうのだ。

中身を食べた後、お鍋に残った水分は、豚と白菜の旨味が溶け出した栄養たっぷりのエキス。
これをおだしドレッシングで割れば、最上級のスープの出来上がり。
最後の一滴まで飲み干したくなること間違いなし。
これぞ毎晩食べても飽きない、冬の簡単“ごちそう鍋”と言えよう。

《レシピ》

 

 

 

 

◆白菜と豚肉の重ね蒸し

【材料】2人分

白菜:1/4玉
豚ロース又はバラ、薄切り肉:250gほど
水:50㏄
おだしドレッシング:適量

  • 白菜は食べやすい大きさに切り、鍋に豚肉と重ねながら入れる。重ねるのが面倒なら、白菜の芯の部分を一番下に敷き詰め、次に葉の部分をのせ、最後に豚肉で覆う感じに入れてもよい。
  • 水を入れてフタをし、中火で10~15分ほど蒸す。白菜がしんなりすれば出来上がり。おだしドレッシングをかけていただく。

※白菜から水分が出るので、水は鍋の焦げ付きを防ぐ程度でよい。

蒸すほうが白菜の甘みが引き出されるが、多めの水で煮込むように作れば最後にスープとしてもたっぷり楽しめる。お好みでどうぞ。

2025年11月15日

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