国産なたね油&はちみつディップで“ごちそう”に

 

エッセイスト  湧月りろ

 

まるで宝の地図でも発見したかのように、今、私はわくわくしている。
国産なたね油とはちみつをただ単に混ぜただけで、なぜこんなに美味しいのだ。

「なんだこれは!」なんて、あの有名なセリフを口走りたくなる気分。

前回のエッセイで書いたように、このなたね油は香りが素晴らしい。
種をていねいに窯で焙煎してゆっくり搾った香ばしさに、野菜の味わいがフワリと乗っかったような軽やかなコクがある。
そこにはちみつを加えると、香ばしさとコクが溶け合って丸みが出る。絶妙だ。

―― これをそのままディップにしたらどうかな。

そう思い付くと居ても立っても居られなくなり、雪がやんだ隙にアブラナ科の野菜を買いに走った。

 

菜の花にコカブ、芽キャベツ、色味に惹かれて紅心大根もゲット。

さて、どうしようか。

 

 

そう言えば山中油店さんを訪れた時、おかみの浅原貴美子さんがこんな事をおっしゃっていた。

「いい油は熱を加えるのがもったいない。そう言わはるお客さんも多いんですけど、火にかけてもまたそれはそれで美味しいんですよ」

確かに、私もそう思っていた派だ。生のまま、ドレッシングや和え物にすれば香りを生かせるけれど、熱を加えると香りが飛んで味が変わってしまうのではないか。美味しさのレベルが下がるのでは、と。

けれども、おかみさんのアドバイスでちょっと安心できた。今日はグリルに使うとしようか。

かなりミニサイズのコカブと芽キャベツは、かわい
らしさを出すため半切りで。

コカブを葉付きで使う場合は、葉の付け根に土が
挟まりやすいからしっかり洗っておきたい。

 

 

 

火が通りやすいようにあらかじめ電子レンジで1分
ほど蒸しておけば、あとはフライパンに国産なた
ね油を敷いて軽く焼き目を付ける程度にグリルす
るだけでやわらかく仕上がる。

 

 

最後にほんの少し、海水から作られた塩をふって、とりあえずひとつ熱々を口に運ぶ。

「あ、ほんまやわ……」

油の香ばしさが丸みを帯びたせいで、野菜の甘みを上手に引き出してくれている。
野菜の個性をまろやかに包み込み、味の奥行きを感じさせる。

個性的な国産なたね油が、名わき役としてキラリ光るような味わいに変化したのだ。

これを文頭の“国産なたね油&はちみつディップ”で食べると、これがまた良い。デザート感が出てくる。これはおもしろいぞ。
いつの間にやら国産なたね油の探索に夢中になっている自分に気付いて、なんだかちょっと嬉しくなった。

―― 私、ハマってるな。

メインになるおかずも、なたね油尽くしでやってみよう。

なたね油で焼いた菜の花を豚肉で巻いてさらになたね油で焼き、なたね油のタレをからめてなたね油のディップで食べるという、文字にするとちょっとばかり暴走気味な一品を作ってみた。

しかしこれがどうだ。こんなに油を使っているのに、不思議なぐらい油っこさがない。
しかもこれ、ディップがなんともよく似合うではないか。わずかに添えただけだというのに、この甘みと香りが普段のおかずに“ごちそう感”を与えてくれる。

ただ混ぜただけなのに、たいそう贅沢な味わいに思える。
甘美な春の歌が耳の奥に流れ出すディップ。これも国産なたね油のなせるわざなのか。

私はもうすっかり、宝探しの旅人になってしまったようだ。

 

                         2025年2月27日

<レシピ>

【材料】2人分

豚ロース肉スライス:厚め4枚(薄切りなら8枚)
菜の花:4本
国産なたね油:菜の花グリル用小さじ1、肉グリル用大さじ1
はちみつ:大さじ1
醤油:大さじ1
塩、片栗粉:適量

・ディップ
国産なたね油:大さじ1
はちみつ:大さじ1

 

  1. 菜の花は洗ってお皿にのせ、ラップをかけて電子レンジで蒸す(600W 1分ほど)。
  2. 1を熱したフライパンに入れ、「国産なたね油」を軽くからませながらサッとグリル。塩少々をふる。
  3. 豚ロース肉スライスをラップに並べ、2を巻き、片栗粉をまぶして、少し多めの「国産なたね油」で焼く。
  4. 火を止めていったん肉を皿に引き上げ、フライパンに残っている油に醤油とはちみつを入れてしっかり混ぜたら再び火をつけ、肉を戻してタレをからめるように焼き付ける※。一口大に切り分ける。
  5. 「国産なたね油」とはちみつを混ぜたものをディップとして添える。

 

 

 

 

※焦げやすいので注意を。
紅心大根はスライスして電子レンジで1分、巻いてディップをつけてどうぞ。

 

メイン料理と野菜 photo by Shigeo Shibata

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