秋風に芳香をのせて。柑橘の香り&サツマイモ                               レモンオリーブオイル・オレンジオリーブオイル

エッセイスト 湧月りろ

朝、目覚めて窓を開けると、サラリとした風が頬をなでた。
昨日とは明らかに違う肌ざわり。
京都にもついに秋が来たようだ。

先日のニュースでは、京都の猛暑日が観測史上初の60日に達し、日数の多さでは全国の県庁所在地で第一位になったとのこと。
熱帯夜も60日となり、60-60の記録を達成したという。
あまり嬉しくない大記録である。
みなさんの地域ではどんな感じだっただろうか。

人間とはおかしなもので、あ、涼しいなと思ったとたんに、秋の味覚が恋しくなる。
昨日までコンロに点火するのも躊躇していたのに、今日は久しぶりに温かいスープを飲みたいとさえ思う。
急にそんな思考に変化した自分が滑稽でもあり、不可思議でもあり。

秋のイメージで頭に浮かぶのがサツマイモ。
台所に焼きいもの匂いが充満している時の幸福感といったら……
煮るのもいい。
特に気に入っているのはレモン煮とオレンジ煮。
レモン煮は生レモンのスライスを入れて煮込んだもの、オレンジ煮はオレンジジュースで煮込んだもの。
コトコト煮込んでいる台所にただよう、あの芳しさまでが愛おしい。

しかし今年はこの二種の魅力を手早く、しかも、さらに芳しい料理法で楽しむ術を知ってしまった。
レモンオリーブオイルと、オレンジオリーブオイルで味わうサツマイモである。
サツマイモの輪切りを、それぞれの油で裏表じっくり焼くだけでごちそうになり、香りまでが極上なのだ。
おいしい塩を少しふると、もう手が止まらない。
オレンジオリーブオイルで焼いたものにはシナモンパウダーを少量ふってもいい。
まるでデザートのようになる。
レモンオリーブオイルで焼いたものにハチミツをたらせば、ハチミツレモン焼きいもだ。
字面を見ただけでも魅惑的ではないか。

フライパンのフタを使ってじんわり焼き上げ、ほっくりと仕上げてもいいし、多い目の油で表面をカリッとさせてもいい。
焼いたり蒸したりしてから、それぞれのオイルをディップする方法も、これまた風味を楽しめておすすめだ。

今回は少しアレンジして、食事時の副菜にもなる簡単な一品をご紹介したい。
レモンオリーブオイルで作る「サツマイモの金平・レモン風味」。
お醤油感を強くするとおかずっぽくなるし、砂糖やハチミツを加えればおやつ感覚になる。
もちろんオレンジオリーブオイルで作るのもおいしいので試してみていただきたい。

〈レシピ〉

♦サツマイモの金平・レモン風味

 

 

 

 

 

【材料】2人分
サツマイモ:中サイズ1本
レモンオリーブオイル:大さじ1
みりん:大さじ1
醤油:大さじ1

①サツマイモは洗って皮ごと細切りにする。ホクッとした食感が好みなら太めに、カリッとさせるなら細めにカット。アクの強いサツマイモなら数十分ほど水にさらしてから水分を切っておく。

②少し温めたフライパンにレモンオリーブを敷き、①を入れて中火でゆっくり炒める。透明感が出て黄色味が濃くなり、少しきつね色の焦げ目がつき始めたら火を止めて、いったん皿に取る。

③フライパンにみりんと醤油を入れ、中火で少し水分をとばしたところへ②を戻し、絡める。つやが出たら出来上がり。

※油を変えるだけで風味がまったく変わるので、レモンオリーブオイル、オレンジオリーブオイルの他にも、玉締めしぼり胡麻油国産なたね油などを使って楽しんで。煎りゴマをからめてもおいしい。

2025年9月21日

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