油屋のふたことみこと

油にまつわるキレイの話

10月3日(土)の午後、JR東海さんの企画で
「油にまつわるキレイの話」と題して、
内から外から私達をキレイにしてくれる油の話と、「試食体験」をしていただきました。

まずは、油店の向かいにある「出水町家」でお勉強。
クイズを交えながら、進行します。

「山中油店は約二百年前、江戸時代後期の創業です。
その頃、主に販売していた油は何だったでしょうか?」

  1. お燈明用の菜種油
  2. 食用のごま油
  3. 髪や肌に塗る椿油

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正解は、1番、お燈明・灯り用の菜種油です。

油と言うと、カロリーが高い、太る、汚れる…など、マイナスイメージが先行しがちですが、
いい油は美味しくって身体にもよく、キレイになれる!
そして身の回りもキレイにしてくれる!
と、プラスイメージに変えていただこうという内容です。

さてさて、今回私達をキレイにしてくれる油の代表格としてご紹介したのは椿油。
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スキンケアオイル「京椿」と お手入れ用の「純正椿油」

お肌の乾燥が気になるこれからの季節、
お化粧前にも使える「京椿」は欠かせないアイテムです。
男性の髭剃り後にもすっごく好評なんですよ。

髪のお手入れには「純正椿油」。
シャンプー後、タオルドライした髪や地肌にすり込むと、
しっとりと落ち着いて、まとめやすくなります。

その昔から、日本女性の長い黒髪を守ってきたのが、この椿油と黄楊(つげ)のくし。
ホンツゲは、生育が遅いため、年輪など木の組織がとても細かく、材質が堅牢で、
高級なくしや将棋の駒、そろばんの珠(たま)などに使われています。
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頻繁に洗髪することもなかった昔の人々は、椿油をよくすり込んで汚れを浮かし、
髪をとかしながら、フケやほこりを取っていたのです。
黄楊のくしは静電気が起こらず、お手入れをきちんとすれば代々使えるもの。
くしのお手入れ方法もご紹介しました。

買ったばかりの黄楊のくしは、ビニール袋に入れ、
椿油を数滴〜10滴(大きさによる)たらして1晩ほど馴染ませておきます。
高級な黄楊くしのためには、必ず椿油を使ってくださいね!
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2〜3ヶ月に一度は、くしのお掃除とお手入れをします。
特に目の細かいくしには汚れがたまりやすいですし、
くしに十分な油分がないと、髪の油分を、くしが吸い取ってしまうからです。
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このくしの汚れを取るのは結構大変ですが、椿油を使うと、うんと時間短縮できます。
くしに綿棒や歯ブラシを使って、たっぷり椿油をつけ、くしの汚れを浮かせます。
10分ほどおいてから、目の粗い歯ブラシで汚れを取ります。
くしの歯の間の細かい汚れには、歯間ブラシや糸ようじを使います。
歯のケアグッズを有効利用できるので、「くしの歯」とはよく言ったものだ!と感心します。

保湿のため、また油分を蓄えたい場合には、椿油のような性質の油を使います。
このような油を乾きにくい油「不乾性油」と呼んでいます。

もうひとつ、身の回りをきれいにしてくれる油に、
乾きやすくて皮膜を張るので、防水効果の高い「乾性油」があります。
荏(え)油、桐(きり)油、亜麻仁(あまに)油などがその仲間になり、
京町家の紅殻格子には欠かせない油です。
木材に、防虫や防腐効果のある柿渋やベンガラを塗った後、
油を「塗る」と言うより「すりこむ」様にして塗りこんでいきます。

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山中油店の紅殻格子には、「半乾性油」の菜種油を塗りこんでいます。
五代目当主(86歳)によると、
「乾性油は、菜種油を十分にしみこませておいて、最後の仕上げに塗るもんや。」
200年近く塗りこんでも、まだまだ仕上げ段階ではない。。。
油の奥深さに人生の教訓を知る思いで、今も菜種油をしみこませております。

乾性油は、紅殻格子のほか、和紙に塗って番傘に使われたりしています。
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昔の人は、あらゆる生活体験から、用途に応じた油を上手く使い分けてきたのだな、
と、その先人の知恵の素晴らしさに驚きます。

さて、お勉強の次は、カフェ&ワインバー綾綺殿(りょうきでん)に移動して、
油のテイスティングと、ちょっと面白い試食体験です。
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面白い試食って??
アイスクリームに油をかけていただくというものです!
綾綺殿の人気デザートメニューのひとつに「すごい!バニラアイス」があります。
「何か」がかかっている。― そう、オリーブオイルがかかっているのです!
それがまた美味しくって、「わぁすごい!」と声が上がるから
「すごい!バニラアイス」なんですよ。

今回は、レモンオリーブオイル、オレンジオリーブオイルのほか、
玉締めしぼり胡麻油や芳香落花生油をアイスクリームにかけてお試しいただきました。
「意外といけるんですね!」「さっぱりしてるから不思議!」
「ごまをかけたら急に和風アイスになって面白かった!」などなど歓声が上がります。

遠くからお越しくださった20名の皆様、ありがとうございました。
また、定員を上回るたくさんのご応募をいただいたそうで、重ねて御礼申し上げます。
来てくださった方々も、お越しになれなかった方も、
機会があれば、是非ともまたお訪ねくださいね!!